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 写真館〜Photo & Story〜
 ●夕焼け 〜 Sunset Orange 〜
 ●秘密基地 〜 backyard 〜
 ●泥 〜 Global Trick 〜
 ●枯葉 〜 Discovery 〜
 





<夕焼け 〜 Sunset Orange 〜>

 男は眠りの海から浮き上がる。泡沫とまったく同じスピードだ。
 目を開く。
 まったく知らない場所だった。ポケットを探る。持っていたはずの時計とコンパスも無くしてしまった。
 方角も分からない。地図も持っていない。いったいここは何処だ?
 ふと見れば、オレンジ色の太陽。
 男は思わず口にする。
「綺麗な朝焼けだ」


 <秘密基地 〜 backyard 〜>

 彼女は僕の妻だ。幼馴染だった彼女が伴侶に変わったのだ。
 そう、変わったといえば、彼女は幼い頃の面影をちっとも残していない。
 僕がちっとも変わっていないのに対し、彼女の変わりようは変態を経た蝶のようだ。
 今、僕らは里帰りをしている。といっても、彼女の家族は今はもう居ない。
 だから僕は彼女が寂しがらないよう、昔の話をしてやることにした。
「ほら、覚えている? この裏庭・・・・・・。僕らの秘密基地だったよね」
「ごめん。覚えてない」
「かくれんぼとかしたよね。君は、いつだってこの秘密基地に隠れてた」
「もうやめない? 私、お風呂に入りたいわ」
 どうやら、ここに居ないのは彼女の家族だけではないらしい。
 僕らの思い出も、ここにはもう無い。
 彼女は別人のように変わった。
 別人のように・・・・・・・。



<泥 〜 Global Trick 〜>

 泥が噴き出している。まるで溶岩が固まってしまった後のようだ、と男は思う。
  その塊のすぐ傍で、5歳ぐらいだろうか、少年が額に汗を流しながら穴を掘っていた。
 「何をしているの?」
 「穴を掘ってるんだよ。見てわからない?」
 そう言って、少年はスコップを振り上げた。穴は、少年の肩を覆い隠すほどの深さになっている。
 「何処まで掘るの?」
 「地球の裏側まで」 少年は無邪気に笑う。そして、傍らの泥を指差す。
「そんでさ、この泥を流して来たやつを、ぼく以上におどろかせてやるんだ」
 男は、「国際人だね」というジョークを思いついたが、黙っていることにした。 




<枯葉 〜 Discovery>

 今日は久しぶりの休日。
 男は我が子を連れて、近くの小川の傍を歩いていた。小さな川だが、やはり心が落ち着
く。子供の頃は、こんな川に釣れるはずもない釣り竿を垂らすのが楽しかった。
 我が子はどんどん先に歩いていく。元気なものである。
 そして、彼女が最も好きなポイント。橋の下にやってくる。
 コンクリの橋をくぐり抜けるのが、彼女は大好きだ。
 彼女は腰を曲げもせず、男は膝を曲げてしゃがみながら進む。
 橋をくぐりぬけ、彼女が振り返る。
 そして、いつものセリフを言うだろう。「おとうさん、おそいよ」と。
 だが、今日は違った。
「おとうさん、はやくきて!」
 目を輝かせて呼ぶ声。
 男は、頭をぶつけそうになりながら急ぐ。
 そして橋をくぐり抜け、彼女の視線の先を追う。
 枯葉が一枚。丸まったようになって下がっている。
「ホラ!おとうさん、てるてるぼうずだよ」
「明日も晴れだね・・・・・」